地域でいま 2月
可部夢街道 町並みづくりフォーラムから
「古民家を生かす手だて必要」
 
安佐北区可部地区の可部夢街道町並みづくり実行委員会(辻英明会長)による町並み景観保全を目指す取り組みが進んでいる。昨年11月には「住んでよく、訪れてよい可部の町づくり」への道筋を探る初のフォーラムを開催。町並みづくりのガイドラインも3月完成に向けて大詰めを迎えた。
 フォーラムは旧街道のコミュニティーサロン可笑屋で住民約40人が参加。安佐北区の宮川裕壮区長(60)、広島文教女子大(地域福祉学)の菅井直也教授(57)、1級建築士の加納明男さん(69)=可部南3丁目=が出席した。
 辻会長(75)=可部3丁目=は「歴史のある可部には江戸、明治時代の古民家やお寺、神社などがある。これらの遺産を生かし、町づくりをすることで訪れる人が増え、町に賑わいをとり戻したい」とあいさつ。
 司会の梶川暢之事務局長(78)=可部2丁目=は「可部はかつて出雲、石見両街道の結節点として栄えてきたが、近年は郊外大型店やスーパー進出の一方で旧街道は空洞化し、空き家も目立つ。生活道路は通過道路になり住みにくい街に。このままでは歴史ある街も宝の持ち腐れになる。町づくりアンケートでは昔の雰囲気を生かした取り組みを6割の人が求めた。今のままでは30年後に様変わりし、われわれの取り組み姿勢が問われそうだ」としてパネリスト3人に町並みづくりへの提言を求めた。
 3人の発言要旨は次の通り。(発言順)

う回路の計画推進
 宮川裕壮区長 かつて手がけた横川駅前広場整備の取り組みは、横川が単独でなく可部と一体になって取り組んだところが素晴らしく、評価された。その取り組みが可部の町並みづくりのヒントになり、賑わい創出に役立てばと思う。
 特に日本で初めて走った路線バスの復元は取り組みの柱になり、企業の協力へとつながり魂が入った。復元はモニュメントから動くバスに発想が変わり、今では可部や横川でのイベント、両地区を結ぶ行事でも活躍している。
 交通量の調査で旧街道は「折り目」で1日に1万台走行することが判明。通過車両で歩行者は危険、町並みの雰囲気も壊れている。旧街道のバイパスの役目をする可部―大毛寺線は可部高校入り口、高陽―可部線も安佐市民病院北でストップしている。残る区間の予算化に向けて事業認可を早く取得するため来年度から測量をスタートさせる計画でいる。
 う回路が完成すれば旧街道を通過する車を減らすことができる。通行車両が減少すれば事故の心配が減り、町並み保全や賑わいの創出にも弾みがつく環境になる。

遅くない取り組み
 菅井直也教授 可部街道は古民家が点々と残り、歯抜けの状態と言われるが、この状態でも町づくりは出来る。オーストリアの首都ウィーンの街は最近、奇抜な建物が建ち雰囲気を壊した。しかし、地元の人は「今は変だが、50年、百年後にはいいのでは」という。今の建物も建設当時は奇抜だったろう。何百年たった今は、もてはやされている。青森県弘前市では明治の西洋館の間に古い建物があり楽しい。ミニチュアの模型ではないから、古い建物がまとまってある必要はない。武家屋敷の保存で復元工事も進み、空き家には案内人もいる。部分的に柱や生け垣だけの所も。だから今からの取り組みでも遅くはない。
 豊臣秀吉が最初に作った城の長浜城。周辺には可部と同じ古民家の中に結構けばけばしい色の建物がある。これは古民家に若い人がジーンズなどの店を出している。客もベビーカーを押した若いお母さんとお袋さん、中年の人もいて楽しんでいる。若者や中年向きのブロックが街に混在し、そこには人を誘う街がある。
 可部の花の散歩道にも誘いがある。月と年間イベントを載せたガイドブックを作り、いつ行っても何かがある街。町全体を老人ホームに仕立て、病院は保健室に、商店ごとに専門性を持たせるのも一案。観光客が1週間、1カ月泊まれる滞在型の古民家観光で、宿賃は労力提供でもよいようにすると夢がある。

古民家再生積極的に
 加納明男一級建築士 最近の住宅は合理性を追求したプレハブ建築が主流だが、日本の建築は自然との調和を重視し、客のもてなしに主眼を置いてきた。カナダやアメリカへ視察に行って見た団地の住宅は木目のない資材を使っていた。その点、日本建築は自然をうまく利用し、腐りやすいところにはクリ、ヒノキを使い、内装にはスギを使う知恵がある。温かい味がある。磨かれた板も美しい。古民家の定義はないが、伝統的な建て方で百年ぐらい前の建築を言う。その復元と再生の手法の中で、復元は忠実にそのまま元の姿に戻す。再生は日本文化の良いところの住空間を残して住みやすく改善すること。町並みづくりには古民家の再生を積極的に進め、日本建築の伝統を伝えていく必要がある。
 古民家は腐った土台は取り替え、補強しながら家族の歴史を伝えて行く。自分の生き方、先祖の思いを将来の子どもたちに「親の文化」として大切に伝える道具にしたい。何でも買える世の中で、買えないものは伝統の文化と技術。みんなが心を一つにし、先人の技術を参考にしながらガイドラインに沿った景観を再生すれば町づくりも成功する。古民家に関することは何でも相談してほしい。

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出席者から行政の支援求める声
 旧街道一帯は江戸期に出雲、石見両街道が分岐する交通の要衝だった。歴史的な建物が残る街並みは近年、高齢化や後継者難で空き家が増え、さら地や駐車場に変わるところもある。出席した住民からは、通行車両による人身事故の防止や古民家への課税と都市計画の関係などが問題提起され、町づくりへ行政の支援を求める声が出た。


 
可部夢街道

可部夢街道町並みづくり実行委員会は、2003年に発足した可部夢街道まちづくりの会、街道沿いの9町内会長と有志で10年2月に結成。旧街道一帯に残る町並みの景観を残す取り組みを続けている。
 その第一弾として可部1、2丁目と下の町の、いわゆる「折り目」で73戸を対象にアンケートを実施。その結果に基づいて昨年4月に「町並みづくりガイドライン」を作った。今後、他の6町内会の111戸を対象にしたアンケートに基づいて第二弾(最終版)のガイドラインを3月に作る。
 これまでのアンケートでは、▼街並みに統一感を=同意70%▼街並みをきれにする=同意90%▼格子の窓、戸など建具に配慮する▼看板は最小限に▼エアコンなど屋外器に格子のカバーを=以上各同意60%▼駐車場などを格子で目隠し=同意45%など、街並み景観の保全に理解を示した。
 これを踏まえたガイドラインでは@みんなで共有する基本的な考え方では建物の統一性を持たせ、住民も来訪者も楽しくなる街並みを目指すA各家庭で心がけることでは、建物と付属物への配慮で和風デザインの取り入れを奨励するB新しく家を建てるときの心がけでは、できる限り旧街道の街並みに配慮した形式やデザインにするよう勧めている。
 ガイドラインは法的な拘束力はなく、住民の具体的な努力目標として活用する。